物語を現実に

この現実世界が、ファンタジーのような感動にあふれた世界になりますように。

余裕がない時は空を見上げる

 以前友達に言われて、なるほど確かにそうだなあと思ったことがある。

「余裕がない時ってさ、空を見てないんだよね」

 確かに、忙しい時、何かで頭がいっぱいの時、追い込まれているとき、空を見上げていないなあと感じる。

 大学生の時分、病院実習と企業でのインターンのダブルパンチで死にそうになってた時、たまたま、まんまるなお月様が目に入ってふと頭上を見上げた。

 東京の空なので大して星は見えなかったけど、多少ビルでふさがっていたけど、それでも広くて暗い、きれいな闇が一面に広がっていた。例のまんまるなお月様は空の一角にどーんと鎮座しており、ああきれいな夜の空だなあと思った。そしてその時、もうずいぶん長い間空を見上げていなかったことに気づいた。

 別に空を見上げたからどうってわけじゃないのだが、なんとなくこう、上を向くという行為がいいのだろうか、少し気分が明るくなるというか、開けた感じがした。空はいつも通りこんだけ大きくて広くてどこまでも深い。自分の悩みが夜空の深みに少しだけ吸い込まれて、なんだかちょっと気持ちが軽くなったような気がした。

 

 それ以降、折に触れて空を見上げるようにしている。空はどこまでも広くて大きくて、そして沈み込んでいきそうなほど深い。それが、いつも心地よく感じる。自分が何か大きなものに包まれているというか、そんな感じがするのだ。

 逆に、空を見上げた時に、久しく空を見ていないなと感じたら、それは自分に余裕がない証拠ともとれる。そんな時こそ、空に手を伸ばして、空の深みを感じるようにしている。

 今日はまた、まんまるのお月様が夜空に見えた。星はあまり見えなかったが、逆にそれはそれで味がある、深みのある闇になっていた。明日はどんな空が見えるだろうか。

 自分の気持ちの余裕を振り返りながら、今日も空を見上げる。