物語を現実に

この現実世界が、ファンタジーのような感動にあふれた世界になりますように。

自己肯定感の基本は母子関係から

 キャリアアドバイザーをしているときに、自分に自信がないという学生をたくさんたくさん見てきた。根本的な自己肯定感がどうして失われてしまうのかについては以前の記事でも書いたように思うが、最近さらに一つ思うことがあった。それは、いわゆる愛着形成との関係である。

 愛着形成とは、平たく言うと、赤ちゃんの時に、養育者、特にお母さんとの相互の愛情を育む過程のことである。ネットを調べればどのサイトでも出てくるが、乳児期・幼児期で十分に母親に愛され、また児も母に心置きなく身を預けることができるこの関係が、その後の児の、他人に対する基本的な信頼感を持つために重要になっていく。

 この基本的な信頼感を持てるというのは、他人に対して「この人は信頼できる」と信じることができる、というだけでなく、「自分は(目の前の人と)対等な関係を結ぶだけの価値のある人間だ」という、自分に対する自信を持つために非常に重要なプロセスだ。ただ、最近よく言われているようなネグレクトだったり、親にそのつもりがなくとも、厳しく育てすぎてしまっているせいで子どもが母親が怖くなったり、自分に対して自信を無くしてしまったりすると、いわゆる愛着形成不全からの自己肯定感の喪失、という事態が起こる。

 

 ここまでは知っていたことだが、以降が私が最近得た気づきである。

 基本的な愛着の形成は2歳前後までにできる、と一度習ったことがあるため、私は、大きくなってしまったらもう取り返しがつかないものかと思っていた。

 しかし、多くの母親が、中学生・高校生、もっといくと20歳前後までいった子どもと、大きくなってから愛着形成、基本的な信頼関係を取り戻すことができているという事態を目の当たりにした。

 関係が改善するまでの十数年間、親子の間に信頼はなく、叱られたり殴られたり、子どもも反発して暴れたりして、しまいには不登校になったり障碍者扱いされたりするような状態であっても、丁寧に親子の関係を改善することで、殴ったりすることもなく、暴れたりすることもなく、不登校や知能レベルなども改善していき(実際は知能レベルが改善したというより、元々もっていた能力が発揮できるようになったという意味だが)、最終的には子どもが大きな苦難を乗り越えたことで自信を取り戻し、自分をきちんと信じられるようになっていくのだ。

 子どもがいくつになっても遅すぎることはない。親子関係を丁寧に良くしていけば、子どもは必ず変わっていく。自分に自信を持てるようになっていく。私自身が諦めていた面でもあったが、それを信じられるような場面にたくさん立ち会えてよかったと思う。