物語を現実に

この現実世界が、ファンタジーのような感動にあふれた世界になりますように。

医学における虐待について学んできた

 私はたまたま医者である。仕事としては人を治すことだ。主に体の不調や病気について取り扱うことが多いが、精神的な分野や、社会的な分野も医学には含まれる。精神医学や保健衛生などといったものだ。そういったものを含め、医学の領域は多岐にわたる。

 その中で、虐待というのは、医学の中ではまだまだ新参者の分野である。アメリカでは、1874年ニューヨーク市において、メアリー・エレンという少女が親から虐待されていたことが発覚し、報道されたところから、その対策が始まった。日本では最近ようやく福祉の文脈で注目されるようになってきたものの、医学の世界はおろか、心理の世界でもまだまだ大きな扱いはされていないのが現状である。

 さてこの虐待という現象は、医学的な疾患として見ると、実は非常に危険極まりないものである。たくさん理由はあるが、例えば

1. 放っておくと重症化し、最悪死に至る。(勝手に良くならない。言うならばガンみたいに、放っておくとどんどん悪くなる)。

2.. 子どもの発達にとてつもなく大きな影響を及ぼす(ほかの重症な神経疾患や精神疾患のように、子どもの知能の発達や、感情の発達がうまくいかなくなる)

3. 垂直感染しやすい(統計的に、親に虐待されて育った子は、自分の子どもができたときに同じように虐待しやすい。つまり世代を超えて繰り返されてしまう)

 など、癌などの重症な疾患と遜色ない点が多い。

 最近医療界では、この虐待に対してどうやって発見し、治療していくかといったことについての方策や対応が議論され、徐々に形になっていっているところである。

 

 この虐待についての講習会、BEAMSといったものに本日参加してきた。親が虐待をしているかどうかを判断するのは難しいが、親との関係性を悪くすることを恐れて放置してしまえば、その虐待は繰り返されてしまう。しかしそれを実際の臨床現場で親に対して言うことは、非常にハードルが高いことのようにも感じた。

 とはいえ、子どもの安全、そして健全な成長が第一義的に守られなければいけない以上、そんなことは言ってられないのだろう。今日は具体的にどうやって親との関係を守りつつ、子どもを虐待から助けられるのか、そういったことを学んできた。

 実際目の前にそのような家族が現れたとき、自分はきちんと対応できるのだろうか。でも、できるできないというよりは、やるしかないのだろう。