物語を現実に

この現実世界が、ファンタジーのような感動にあふれた世界になりますように。

今までの経験の振り返りが「本当の自分の気持ち」に気づくヒント

 昔キャリアアドバイザーをやっているときに、多くの人が、思っていた以上に自分の気持ちというものがわからないということを知った。

 私は特に大学生の進路相談をしていたのだが、「どんな会社に就職したいか、どんな仕事をしたいか」が明瞭な子はほとんど見受けられなかった。自分が本当は何をしたいのか、どういうことが好きなのか、どういう風にしていれば幸せなのか。そういったことを知らないまま生きている人が非常に多かった(8~9割くらいの人がそうだったと思う)。

 なぜこんなことになっているのだろう。これを知るためには、結局「どうして自分がそういう風に思うのか、感じるのか、考えるのか」を深堀する必要がある。

 しかしこの深堀が予想以上に難しい。実際にやってみるとわかるが、自分のことなのに全然深められないことが多い。

 だが、キャリアアドバイザーとして活動している中、これは絶対に考えなくてはいけない、というポイントを発見した。それはいわゆる「今までの経験」というやつだ。

 

【人同士、考えは違う】

普段の生きている中で、当然人と意見が食い違うことがある。当たり前だ。

 私はこう思っているのに、Aさんは違うことを言う。私はもっと慎重にやったほうがいいと思うのに、Bさんは早くやることが重要だという。私は一人の時間が大事だと思うけど、Cさんはみんなと一緒に行動しない奴は変な奴だという。

 この意見の違いについて当然のことと思っているかもしれないが、そもそもなんでこんなに意見が違うのか?なぜ人はこんなに違うのだろう??

 いろーんな人はこれにいろーんな答え方をしているので一個一個考えるつもりは1㎜もないけど、今回は「経験してきたことの違い」という面で考えてみようと思う。

 

 

【さて世界中の国から来た人がごちゃごちゃに集まったとしよう】

 ここにおいて、「これからの若者に必要な能力は何だろう?」という話をしたとする。

 あなたはここで、だれもが私と同じ意見だ、と感じることはさすがにないだろう。各国の人は、背負っている文化、風習、食べ物に至るまで全く違うので、そんな人たちが、「これからの若者に必要な能力」なんてあいまいで難しい話で完全一致するとはとても思えない。

 アメリカ人は「自由な発想力だ!」というかもしれないし、イタリア人は「女の子をナンパする力だ!」というかもしれないし、シリアの人はもしかしたら「安全を確保するコミュニケーション能力だ!」というかもしれない。かなり私の偏見が混ざっているが…。

 ただ注目してほしいのは、これは「人種が違うから」考え方が違う、というわけではなく、「育ってきた環境、およびそこで経験・吸収してきた様々なことが違うから」考えた方が違っている、という点だ。

 例え血はアメリカ人だろうと、生まれてすぐ日本に来てその後ずっと日本に住んでれば、おおよそ日本人のような考え方になる(もちろん親の考え方も影響するので親の日本人度合いにもよる)。逆に日本人でも、生まれたときから海外にいたら、それはほぼ外国の人だ。

 

【日本人同士でも当然経験してきたことは違う】

 同じ学校の人なんてのは、同じ年齢でたまたま同じ地域にいた人が集められたわけで、当然そこに至るまでに経験してきたこと、環境は違う。

 同じ職場なんてのは、たまたま業種・業界・場所が一致しただけで、それこそそこに至るまでの経歴は何一つ一致しない。住んできた地域、親の性格、学校での成績、部活のハードさ、仕事のきつさ、友人の数、どんな友人がいたか、何一つ一致しない。どんな成功体験があったか、どんな失敗をしてきたか、どんなピンチがあったか。一人一人が経験してきたことは、似たような経験の人はいるかもしれないが、絶対にほかの人とは違う。そのたくさんの経験を積み重ねてきての人生なのだから、それはもう完全にオリジナルなのだ、あなただけしか知らない経験の集積なのだ。

 

 なぜこんな当たり前のことを言うのか?

 

 一人一人の人生が違うことなんて当たり前。そして一人一人考えることが違うのだって当たり前。そんな当たり前のことをなぜわざわざ言ったのか。

 それは、「人は、人が今まで経験してきた色々なことをベースに考えている」という当たり前だけど、だれもがそれを振り返らないことを言うためだ。

【経験の深堀をすることはなかなかない】

 あなたはだれかと意見が食い違ったり、人と違うと感じたとき、「どうして私はこのように考えたのか」と考えたことがあるだろうか。

 軽くは振り返ったことがあるかもしれない。「昔先生に怒られたから勉強が嫌いになった」などだ。しかしこれは十分な振り返りだろうか?

 あなたがその時感じたのはそれだけだったか?先生に怒られて恥ずかしかったのか、無力感があったのか、それともそのあと親に怒られるのが嫌だったのか、だとしたらなんで嫌だったのか?ここまで掘り下げて考えただろうか。

 一個一個の事象もとても大事だが、その時感じたこと、考えたことはもっと大事だ。なんせ、その時に感じた気持ち、考えが、一個一個の事象を離れて、自分の普段の生活や思考に影響するのだから。

 非常にわかりやすい例を挙げるなら、昔から親に厳しく育てられて、あまり褒められず、ああしなさいこうしなさいと言われて育った人間は、自己肯定感が低く、指示待ち人間になりやすい。それは、小さいころからの経験を通して、「自分はなにをやっても上手くできない」とか「なにか勝手にやったら怒られる」と感じるからだ。これら無力感や投げやりな気持ちが重なってそのような性格が形成される。

 これは極端な例だが、このように、色々な事象の背景に感じたこと、思ったことが、今のその人の性格を形作る。そして、それを掘り下げることが、自分の本当の気持ちに気づくためのヒントになる。それが、だれかと同じなわけがない。

 

 今まで自分に起こった経験を振り返ること、その時に感じた気持ち・考えをきちんと今の自分が思い出すこと。そこに、「自分は本当は何をしたいのか、なにが幸せなのか、本当の気持ちは何か」を見つけるヒントがある。

 

【本日のまとめ】

1. 人は全員オリジナルな経験の集積でできている

2. 経験の結果感じたこと、考えたことが今の自分の考え・気持ちをかたどっている。

3. 今までの人生の経験をしっかりと深堀することが自分の本当の気持ちに気づくための最大のヒント。