物語を現実に

この現実世界が、ファンタジーのような感動にあふれた世界になりますように。

できればフットワークは軽いほうがいい

 出足の早い人もいれば遅い人もいる。新しい環境に飛び込むことに慎重な人もいれば、あまりためらいのない人もいる。

 正直これは本人の生まれつきの個性(恐らく偏桃体の発達の程度が関係すると思うが他にもいろいろありそう)と育てられ方によるが、これからの時代、恐らくは新しい環境にどんどん飛び込んでいける人が有利になるのは間違いないだろう。 

 あちこちで言われていることで今更感もあるが、現代は科学技術の発展速度が非常に早い。色々な環境がどんどん変わっていく。iphoneは少し前は当たり前ではなかった。3D映像系やVR,ARなどは2000年代はまだかなり遠い世界のように思われていた。しかし、かなりの速度でこれらのことは実現しつつある。

 上の物はほんの一例だが、技術の発展速度に伴い、今まで自分を支えてきた技術や、自分が拠っている環境が瞬く間に姿を変えていく時代が来ている。これは、大昔の人間の世界と大きく違うことだ。

【昔は臆病者が一番賢かった】

 人間が生物として形作られた(そして今な大変革は起こっていない)数百万年前には、人間の寿命は40もあれば長くて、周りの生活環境はほとんど不変であった。自分を食おうとする肉食生物から身を守ったり、毒性の植物を食したりしないように、人間は固まって、そして極力臆病に、安全と思われていることだけをやるのが最も賢かった。変に違うことやるやつは、すぐに外の危険にやられて死んでしまう。

 ファーストペンギンという話があるがご存じだろうか。ペンギンは多くは群れを作って魚の漁に出かける。しかし、海の中にはペンギンを餌にする肉食動物もいる(アザラシとか)。なので、これから飛び込もうとする海の中にアザラシがいるかどうかはとても重要な問題だ。しかし、陸の上からそれを知るすべはない。

 一番わかりやすい方法は、誰かペンギンが一匹飛び込んでみることだ。そいつが食われなければ安全、食われたら危険だ。しかし、だれもその一匹にはなりたがらない。当然だ。一番に入るやつが一番危険だ。

 その危険な役目を避けようと、海のすぐ縁の陸で押し合いへし合いする。だれかを突き落として入れてしまおうという魂胆だ。しかしそんな慎重なペンギンたちの中で、果敢にも最初に飛び込もうとする者、それがファーストペンギンだ。

 人間の太古の環境においても、ファーストペンギンならぬ最初に飛び込む人間は大抵馬鹿である。なぜなら、それは自分が死ぬ確率が最も高く、結果的に遺伝子を残せないからだ。新しい環境に適応する必要がなければ、勝手知った環境で、危ないことをせずに生活をするのが最も賢かった。

 故に、現代にいたるまで、人間とはより慎重な性格の遺伝子の持ち主が生き残ってきている(はず)。

【しかし、そうではなくなってきた】

 人間の性格とはそう変わらないもので、日本では明治に入っても、昭和に入っても、ほとんどの人間は臆病な行動をとってきた。新しい変化にいきなり飛び込まず、周りの出方を慎重に伺い、自分の磨いてきた技術に頼り、自分の育ってきた環境をできるだけ維持するように努める。特に地方に来て思ったが、なにか新しいことをしようとすると敬遠されるこの環境は、上記の「臆病者遺伝子」が強く働いているのだろうと思う(そしてそれは賢いのだ)。

 ところが、ここ現代、特に20~30年の間で、人間が生物として今まで想定していなかった事態が起こってきている。それは、「自分の周りの環境がいやおうなしにすごい早さで変わっていく」という事態だ。

 すごい早さで変わっていくことの何が怖いかというと、ベストな生存戦略が次々と変わっていくということだ。

 わかりやすく言うと、アマゾンの奥地での生存にたけている人でも、いきなり雪の降り積もる豪雪地帯に飛ばされてしまえば、その人は無力になってしまう。ある程度共通するサバイバルスキルはあれ、基本的な環境に対する生存戦略が全く違う。おそらくその人は、誰かの助けがなければすぐに死んでしまうだろう。

 大げさな例ではあるが、これと似たようなことが起きている。

 今自分が持っている技術は、あっという間に陳腐化する。車の運転で長く食ってきた人たちの仕事は、ほどなく自動運転で代替されてしまうだろう。コンビニやスーパーの店員も、最終的には無人のものに置き換わるだろう(事実中国の都心部アメリカではそういうことが起きているし、日本のスーパーでも無人のレジは見かけるようになった)。

 また教育環境という意味でも、昔は決められた仕事を効率よくこなす人が優秀な人だったが、今では新しいものを生み出すエネルギーを持つ人のほうが重宝される(前者の人も大事だとおっしゃる方もいると思う。その通りだとは思うが、最終的にその人につけられる価値については圧倒的に後者が高いことが多い)。

 そういった環境の変化が次々に起こっていく中で、昔の慎重だった時の人間のままだと、新しい環境の新しい生存戦略を見つけられず、負けていってしまう。

 だから、昔は確かに慎重なほうが賢く、有利であったが、現在は新しいことに飛び込んでいく人のほうが有利になるのだ。

【日本人は慎重だが…】

 元々海外に住んでた身からすると日本人はとても慎重な民族だが、かと思いきや漫画やアニメの世界では次々新しいものを生み出し、しかも規制が少ないなど、一方で新しい環境に飛び込んでいける素養もあるのではないかと思っている。

 現在の中学生~大学生は、もしかしたら親に同じように慎重に生きろと言われるかもしれないが、この激動の時代、どんどん新しいことに飛び込んでいくことをお勧めする。最終的には、それが最も賢い生存戦略となりうるからだ。