物語を現実に

この現実世界が、ファンタジーのような感動にあふれた世界になりますように。

オナ禁のうそほんと(医学論文漁ってみた)

 突然の下ネタで申し訳ない。今までこの手の話題は挙げてこなかったが、突然気になったので調べてみた。

 上記のオナ禁とは、オナニー、つまりマスターベーションの禁止という意味で、一定期間マスターベーションをしない行為のことを指す。

 なぜ男が(女の人もやるかもしれないが主には男がやる)これをやるのかは色々な理由があると思う(依存状態にある、勃起しにくい、時間を使いすぎる、元気がない等々)。

【セックスにまつわるネットの記事の信ぴょう性】

 セックスにまつわる記事は嘘が多いというか、一体何を根拠に…?みたいなものが多い。

  ネットで調べれば本当にたくさんの「私は○○日達成しました!」「こうやればいい!」みたいな記事がたくさん出てくる。

色々なことが書いてあるのだが、大体どの記事でも

「肌つやがよくなる!」

「男らしくなる!」

「モテる!」

みたいな都合のいい話が並ぶので、実際問題どうなんよ?と気になった。

 

せや

 

せっかく医者なので、医学論文を自分で漁ってみればいいんや!

ということで軽く調べてみた。

 

実際論文を漁ってみれば精液の細かい分析までしている論文まであるのだが、今回は二つの論文を紹介したいと思う。

 

オナ禁とテストステロンの関係】

よく「テストステロンが産生される!男らしくなる!」

と書いてある記事は本当に、本当に多く、実際どうなの?と感じたのでまずはこれを調べてみた。

サイトはPubmedを使用し、検索ワードは

Ejaculatory abstinence(禁欲、要はオナ禁の医学用語)と

Testosterone

で検索。するとなんと、ドンピシャの論文は一つしか見つからなかった。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12659241

J Zhejiang Univ Sci. 2003 Mar-Apr;4(2):236-40.
A research on the relationship between ejaculation and serum testosterone level in men.
Jiang M1, Xin J, Zou Q, Shen JW.

 論文としては、28人の健康な男性に、射精をしたのちに一定期間禁欲させ、その禁欲期間中の血中テストステロン濃度を測ったというものだ。

 この論文では、禁欲二日目と五日目が最低値を記録し、7日目に急に血中テストステロン値が高値(基準値の147%、つまり大体1.5倍)になったという。

 そして、その後は血中テストステロンの値に大きな変化は見られなかったとのこと。

 著者は、血清テストステロン値の上昇には、最低7日間の禁欲が必要と述べている。

 この論文は残念ながら要旨しかネットからは拾えなかったが、サンプル数が28人と少なく、また2003年の論文であるためかなり古く、実際どこまで一般化していいものかはわからない。しかし、巷で騒がれる「テストステロンが増える!」という説は、ここから来ているのではないかと推察する(私はこれ以外の論文は見つけられなかった)。

 医者としては2003年の28人のサンプル数での論文で主張するにはちょっと論拠が弱いように思う。ほかの論文があれば教えてほしい。

 

オナ禁と射精機能の話】

 上記の話だけ見れば、最低7日以上、できれば長い間禁欲すればいいのではないか、と思いがちだが、忘れてはいけない。筋肉と同じように、人間は使っていない機能は衰えるといわれる。よく英語では'Use it or lost it'(使え、じゃないとなくすぞ)というのだが、これを示唆する論文はあるのだろうか??

 精子の性質そのもの(および受精率)について調べている論文は複数見られたものの、少し興味深いものがあったのでここで紹介する。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22456105

Urol Int. 2012;88(4):459-62. doi: 10.1159/000337057. Epub 2012 Mar 23.
Ejaculatory abstinence influences intravaginal ejaculatory latency time: results from a prospective randomized trial.
Palmieri A1, Imbimbo C, Longo N, Fusco F, Verze P, Maletta A, Creta M, Mirone V.

 120人の成人男性を集め、

 60人のグループAには3か月の間、10日間の禁欲期間を挟んだ上で性行為を行ってもらい、

 もう半分の60人のグループBには3か月の間、週二回の性行為を行ってもらう。

 事前にintravaginal ejaculatory latency time (IELT)(挿入から射精までの時間)と、

premature ejaculation diagnostic tool (PEDT)(早漏に関する問診票、簡易的な得点付け)

を測ってもらい、3か月後に再度IELTとPEDTを検査した。

 

 結果どうなったか?

 性行為の回数が少なかったグループAは、グループBに比べ射精までの時間が短くなり、また早漏に関する問診票でも劣った点数であった。

 論文の著者は、性交渉が少なくなることで、射精をコントロールする能力が落ちるとしている。

 この論文は120人のサンプルであり、2012年の論文。ただ論文のimpact factorが1.5とあまり高くはなかった。

 

【まとめ】

 オナ禁についてのうそほんとについて一部検証してみた。

 確かに7日間以上の禁欲でテストステロンが上がるという報告はあるが、論文の質、古さ的に信用度は微妙。もし他に論文があれば知りたい。

 また射精機能が落ちる(具体的には早漏になる)とのこと。これも確実なことは言えないが、サンプル数が120人とそこそこあるようには感じた。

 ただ日本人の場合は早漏より遅漏、膣内射精障害のほうが悩みではないかとも思うので、これについてもし調べる機会があれば調べてみたいとも思う。