狂気は一瞬
一瞬の感情の昂ぶり。
自分の心の奥深くが揺れ動くときの、ゾクゾク。
何か一瞬でも気が抜けるとどこかに行ってしまう、荒々しい心の鼓動。
その狂気は本当に繊細で、そして極上の味。外に逃がさないよう、しっかり咀嚼し、咀嚼し、味わいつくす。
じっくりと、心の挙動に翻弄される自分に浸る。そんな心の深みに潜って、沈んでいられる時間は、この上なく贅沢な時間で、人生の新鮮な味がする。
一瞬の感情の昂ぶりを感じられる、そんなものに出会えるのは幸せだ。人はそれを感じたくて、芸術を求めるのだろう。
だが気をつけろ、そいつはとても繊細で、まるで焦燥した自分に愛想を尽かしたかのように、すっと消える。そしてその感情は二度と思い出せなくなる。
そいつは気まぐれで、飽き性で、そして蠱惑的だ。
そう、そいつ、狂気は一瞬だ。出会えたら、絶対に逃がすな。
骨の髄までしゃぶりつくせ。