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思春期の脳の発達(適当に和訳)その3

第三部で和訳はいよいよ完結。

思春期の脳の発達について

Dumontheil, I. (2016). Adolescent brain development. Current Opinion in Behavioral Sciences, 10, 39–44.

http://eprints.bbk.ac.uk/15037/1/15037.pdf

今日で最後まで訳してみましたよ。

ではどーぞ。

 

 

<認知的制御>

認知的制御は広義の意味では、思考と行動の調整による自己の内なる目標の追及において、自分の行動を柔軟に適応させる能力として定義できる。認知的制御能力は学童期に急激に向上し、思春期によりゆっくり向上する。思春期の間は、ワーキングメモリー、抑制、タスクの切り替えを評価する基本的な脳の実行機能は、頭頂皮質の活性化および外側前頭前皮質の活性化および非活性化に関与する。モニタリングやフィードバックラーニング、関r年付けなど、より複雑な認知的制御を必要とするタスクにおいては、機能的変化も観察される。若年期における前頭前皮質の非特異的なリクルートメントは、あるより特化していく認知的制御を司る前頭前皮質の特定の領域(例えば反応抑制を司る下前頭回や関連付けを担う吻側外側前頭前皮質など)の活性化によって置き換えられうる。認知的制御の発達においてのシナプス神経伝達物質の変化についてはほとんど知られていない。しかし、神経伝達物質のシステムに影響を与える一般的な遺伝子変異体を用いた研究はこれらの変化を起こすことかできる。これにより(ワーキングメモリなど)各個人間の認知的発達の違いを再現することができるかもしれない。

思春期とは学生がより鋭敏になり、ネガティブフィードバック(抑制的学習)を覚えることができるようになる時期であり、これは教育に資するところがあるかもしれない。ほかにも、認知的制御能力と学業との相関についてはいくつかの関連が示されている。例えば、ワーキングメモリの能力とその神経は算術能力に関連している一方、より複雑な関係性における推論能力は、数学の学習を補助することもある。認知的制御能力の向上は思春期の人々の記憶の呼び出しと記憶の表現を整理し、モニターする能力を向上させる。

 

<社会的認知と感情>

思春期はまた、大きな社会的認知の変化の時期でもある。社会的な脳において、思春期では成人に比べて内側前頭前皮質のより大きな活性化と、側頭皮質の非活性化を示す。

思春期の人々は、彼らの仲間に対しより社会的に関わるようになり、より仲間の存在と仲間からの評価に対し、行動的にも神経学的にも敏感になる。

思春期の人々は成人の人々に比べてより自己中心的になる(例えば他人の視点を考慮することが成人より少ないなど)ことがあるが、仲間からの疎外に関してはより敏感だし、仲間の存在があるところではよりリスクの高い行動をとる。思春期における社会的機能と社会的発達の神経学的基盤を理解することが、より思春期の社会的能力を高めていく助けになるかもしれない。

社会的文脈と、感情と好意、報酬の文脈は思春期においてどちらも意思決定において重要である。前述のミスマッチモデルの延長戦として、認知的統制能力の発達は、感情的な刺激に対するより鋭敏な反応(例えば思春期に観察される感情的な表情に対する偏桃体のより大きな反応)と競合する。また、思春期の人々の報酬に対するより鋭敏な反応も、彼らが報酬を得たときに観察される線条体のより大きな活性化をみれば明らかである。

この感情と報酬における思春期特有の反応と、特徴的な社会的背景に関連している自己制御能力の低下(例えば不適切な感情、欲望や行動の抑制)が、学童期に比べわずかに高い思春期の死亡率の高さの背景にあると考えられている。しかし、これが若い成人期にも続くので、リスクテイキングな行動は思春期に特有の行動にはならないが、なにが魅力的と感じるかどうかという点で成人とは異なる。

 

<機能的画像研究の限界>

BOLDシグナルは神経活動の間接的な指標だが、故にそれ自体が、人間の発達の際の神経活動とBOLDの関連性に影響を与えるもろもろの因子の影響を受ける可能性がある。脳神経活動の発達における違いは、量的ないしは質的な違いに関連がある可能性があり、それが背景にある脳神経構造の変化とタスク処理機能関連の神経の機能的接続を反映している可能性がある。脳波検査は、よりよい時間分解能を有する面で、脳神経活動をより直接的に測れる指標だが、それでも年代間における違いの解釈を引き出すには難しい。fMRI(BOLDシグナルを見る)と脳波、両方の技術における一般的な限界は、年齢とパフォーマンス(能力)の二つを分離させることが困難であることと、検査時の体動の影響が入ってしまうことである。

 

介入

<より多感な時期としての思春期>

今回のレビュー(この論文のこと)では、思春期の脳と認知機能は流動的な状態にあることを示している。成人における研究では、訓練による介入で、行動、脳の機能、脳の構造に変化を起こすことが示されている動物実験においても、シナプス結合の強化や弱体化により起こされる神経の可塑性のメカニズムは脳の部位によって異なるが、特にヒトの脳の発達によりおこる神経の可塑性についてはほとんど知られていない。思春期に起こる神経の効率性とネットワークの統合を鑑みると、この時期のトレーニングによる介入にはより鋭敏な反応を示すという説が提示されている。実際、できるだけ早期の介入が最も効果的であるという説にも関わらず、思春期に発達する認知と精神的な健康の問題については真実ではないかもしれない。しかし、現在思春期はとても鋭敏な時期であるということについてのエビデンスはほとんどない。脳の構造と認知的機能の現在のレベル、それから遺伝的違いは、トレーニングによって得られる最大のパフォーマンス制限する可能性がある。また、思春期の特徴的な認知能力(よりその人に柔軟で、探索的で、適応的にさせるなど)など、発達におけるすべての要素を向上させることが(多くの面で利益を及ぼす可能性があるため)考慮される必要がある。例えば、抑制的な制御を向上させること学校の授業での能力を総合的に向上させる一方、思春期のアートにおける創造性を制限する可能性がある。このようなトレードオフは十分に考慮されなければならない。

 

<トレーニング(訓練)による介入>

思春期をターゲットにしたトレーニングによる介入は色々な形式をとる。ワーキングメモリや選択的注意の認知的な機械的レーニングから、瞑想によるマインドフルネスのトレーニングと身体活動まで様々だ。いくつかの介入は学校教育の文脈で用いられ、直接的に認知的機能を高めることで(例えばCogMedのワーキングメモリーレーニングなど)、または間接的に自律能力、社交性、well-being(例えば学校教育プログラムにおけるマインドフルネスなど)を高めることで、学業的成績を向上させることを目的に用いられている。これらは、認知的神経科学と心理学における発見が、学校教育における教育プログラムにつながることを示しているが、それにしても、よりエビデンス・ベースの訓練、介入を教育に取り入れ、発展させるためには、より多くの研究が行われる必要がある。一つ認知的訓練の大きな挑戦としては、(これらの訓練による)より広い範囲でのパフォーマンスの向上(特に学業などの指標において)につなげることである。そのためには、広い範囲での訓練より、より限定的な領域(例えば科学領域などに限定した)における訓練の実行が必要かもしれない。二つ目の挑戦は、どの介入方法が最も効果的かの精査が必要であること。その人の実行能力は、その人の社会的経済的な不利にも関わらず人生の成功を収めるうえでとても重要な点に見えるが、身体運動、脳機能の向上および健康の向上、親のケアに介入したほうが、より幅広いメリットがあるかもしれない。三つ目の挑戦は、個人間の違いである。つまり、ある訓練に対しだれが最も利益を得るのか、またどの指標(遺伝的なものか脳の機能的連結性か、または社会経済的背景か)がその個人において最も介入の成功を予期できるのか、見極めるところにある。

 

<結び>

この論文は、思春期の脳における最近の研究をレビューしたものである。思春期は脳の構造的変化の続く期間とみられており、その変化により長期的な発達と、社会的認知能力や認知的統制能力などが向上する。機能的には、思春期の脳の神経ネットワークは統合と個別化の増加、活性化の際の前頭前皮質と脳の背側部におけるタスク特異的な変化、そして線条体における感情と報酬に対するより鋭敏な反応を示す。これらの思春期の脳活動の特異的なパターンは、意思決定の際に関わってくる社会的、感情的、報酬の面の影響を大きくすると考えられている。これら長期にわたる思春期の脳の発達とその特異性により、思春期の人々はある特定の介入に対しより鋭敏な反応を示すかもしれない。これらの仮説や、今回の論文でレビューした思春期の教育に関する研究から得られた知見を検証することは、これからの研究において重要な方向性を示す。

 

<利益相反>

特になし。

<参考文献>

たくさんあるので省略。原文を当たってくだされ。

 

終わり!いやー長かった。でも意外と頭に入ってないので今度またまとめみたいなの作ってみよ。

とりあえず今日はここまで!